すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


高安(大阪府八尾市)

伊勢物語フリークにとって、八尾の高安は「聖地」です。


とは言え、ここに何かがあるとかではないのです。









(第23段 筒井つの)


むかし男ありけり
男は幼なじみと結婚し奈良県天理市辺りで住んでました。
そのうち男は高安に女ができて通うようになりました。
けれども何度も通っているうちに高安の女は緊張感がなくなり、自分でご飯を盛ったりしたので、男は愛想をつかしました(昔は高貴な女性は自分で飯を盛らなかった)。だんだん男の通いは遠のいてきました。

これに対し女、

 君があたり見つつを居らむ生駒山雲なかくしそ雨は降るとも 高安の女
あなたが住んでいる辺り(奈良在住)を見ながら暮らします。
生駒山よ、雨が降っても雲は隠して。
(女の住んでいる高安と男の住む奈良の間に生駒山がある)


そうこうしていると、男の方から「今から行くよ」と連絡があり、待っていたのですが結局来ませんでした。

 
 君来むといひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞふる 高安の女
あなたが来るという夜も、来てくれずむなしく過ぎてしまう。
こんな感じで、あてもせず、あなたに恋しながら生きていこう。



結局男は来なくなりました。





***





【高安を訪問】


ジャーン! 伊勢物語の聖地、高安です!!
なんとも殺風景な中河内の町です。



駅前商店街



これが近鉄大阪線の高安駅です。



道路標識も





そして、これが高安から見た生駒山です。
雨は降っておらず、生駒山は雲に隠れてません!

男はこの山を越えて女に逢いに来てたのです。




おっと、この写真は「高安」駅と「生駒山」のコラボ




※近鉄の車輌基地があり、近鉄ファンの聖地でもあります

(走っている電車の中から撮影)
















次に、高安を詠んだ歌


高安にうつりにけりなほととぎす生駒の山を越えて語らふ 夫木和歌抄
くれぬとてひとり立田の山の端に有明の月は高安の里 鴨長明(夫木和歌抄)

この二首は伊勢物語がらみのもの


夜もすがらいこまおろしに月さへて衣うつなり高安の里 新六帖
雲はれぬ往馬の山のいかならんふもとも雪は高安の里 源家長

う〜ん、これは生駒山の冬の厳しさを描写しているのかな











駅前をうろうろしただけですが、大満足の訪問でした。






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