すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


滝尻王子(和歌山県田辺市)




熊野信仰の九十九王子のうち格式の高い五体王子の一つ。
貴族たちの熊野詣の途上でよく歌会が催された。
ことに正治二年(1200年)の後鳥羽上皇らの熊野参詣での歌会については、「熊野懐紙」により内容が後世に伝わっている。






正治二年十二月六日 (滝尻王子和歌会)

山河水鳥 旅宿埋火



後鳥羽上皇
おもひやるかものうはけ(上毛)のいかならむしもさへわたるやま河の水
 かびやかたよものをちはをかきつめてあらしをいとふうつみびのもと


右近衛大将(源)通親
たにかはのいわまのこけやおしとりのたまものふねのとまりなるらん
うつみ火のあたりのみかはかりいをさすかきねのむめも春しらせけり


春宮亮藤原範光
やまかはのいはうつをとにをとろかていかになれたるおしのうきねそ
うつみひのあたりはふゆのくさまくらもえいつるはるのけしきなるかな


参議左近衛権中将藤原朝臣公経
やまかはやいはまのみつのかけとちてこほりにうつるすかのむらとり
くさまくらあさたつかせもをとさへてなをうつみひのもとはわすれず


能登守源具親
いはたかハいくせのなみにすみなれてわたれとのこるおしのひとこゑ
ならひきぬあさたつほとになりにけりあたりによはるよひのうつみひ


右中弁藤原長房
すみなれぬあちのむらとりさはくなりいしふりかはのなにやおとろく
うつみひのあたりはふゆそわすらるゝたひのそらにやはるのきぬらん


散位藤原隆実
やまかけやをちくるみつのせをはやみよとみにつとふあちのむらとり
くさまくらあくれはさゆるたひのよにまつたちやらぬうつみひのもと


散位源氏家長
いはたかはわたるせことにたちさはきうきねさためぬかものむらとり
うれしくもけふりのあとのきえやらてあさたついまもねやのともしひ


右衛門少尉源季景
すみかぬるおしのこゑのみひまなくてつらゝによはるたにかはのをと
うつみひのまくらにちかきたひねにははらはぬそてにしもそきえゆく


侍従藤原雅経
いはたかはいくせのなみをかつくらんたちぬるおしのすゑにおりゐる
よもすからまきのしたをれかきつめてあさたちやらぬうつみひのもと


沙弥寂蓮
いはたかはこほりをくたくすゑまてもあはれとおもへをしのひとこゑ
くさまくらあたりもゆきのうつみ火はきえのこるらむほとそしらるゝ






そんな滝尻王子はこんなかんじ


社頭



鳥居



拝殿



拝殿から入り口方向



境内のすぐ横を岩田川(富田川)が流れている。



世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録碑


さて、本宮大社へ向かう熊野参詣道は、この滝尻までは岩田川に沿ったルートであったが、ここからは山の尾根沿いに進んでいく。熊野の神域に入っていく。



滝尻王子の境内からいきなり急登コースが始まる。



いやはや大変であった。




後鳥羽上皇の熊野懐紙の歌の歌碑があったので、再掲であるが紹介する。

おもひやるかもの うはけのいかならむ しもさへわたる 山河の水 後鳥羽上皇(滝尻懐紙)


境内に歌碑















熊野懐紙の資料は「ゆーちゃん」氏の『百姓生活と
素人の郷土史』
のホームページを参考にしました。



熊野関係のさまざまな古文書が収載されています。







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