すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


滝の山(山形市)





相当な西行ファンでも、この「滝の山」という西行ゆかりの地を知らないのではないか。

西行の山家集の愛読者でさえ、「滝の山」という一般的な地名や、出羽国の桜の名所という説明だけでは、たぶん記憶に残らないだろう。

山家集で卒論を書くような学生か、地元山形の史跡愛好家ぐらいでないと、このマイナー史跡に興味が持たないのでは。

・・・てなことを考えてしまうほど、マイナーであった。





若くして出家した西行はみちのく行脚の旅に出て、帰途に修験道場として有名な滝の山に立ち寄ったようだ。


又の年の三月に出羽の国を超えてたきの山と申す山寺に侍りけるに
桜の常よりも薄紅の色濃き花にて並み立てりけるを見興じければ
(山家集)

たぐひなき思ひいではの桜かな薄(くれなゐ)の花のにほひは 西行(山家集)


滝の山の中腹に歌碑、経緯度は (38.195566, 140.376125)



歌の中に出羽(いでは)の国名を織り込んでいることぐらいが特長の歌で、それほど感興を催さない。

滝の山の中腹辺りに西行の歌碑が設置されていた。歌碑の隣には桜が植えられていたのだが、これが薄紅の桜なのか、どうなのか。
というか、出羽の桜はもともと薄紅の花が咲くのか。
訪問したのが真夏だったので葉桜だったが、よく見慣れたソメイヨシノっぽい樹形であった。


歌碑(右奥)と桜の木(左)。案内板もあったが、白紙であった。




なお、ほかに西行の滝の山を詠んだ歌として次の二つの歌が伝わっている。


都路を思ひ出羽瀧の山こきくれないの花の匂ひぞ 西行


瀧の山かへりもうでの袖ふれて石の鳥居も細らぎやせし 西行


「石の鳥居」が詠まれているが、この周辺では太くて不細工な石の鳥居が名物になっていて、そのことだろう。(写真無し)


※「石の鳥居」の歌を詠んだのはは上山藩の儒学者五十嵐于拙だという説もある











そんな滝の山に行ってきた。


【滝の山】


山形盆地の西の長谷堂から撮影。頂上は雲に隠れていた。



車で滝の山を上る。
カフェの名前は「三百坊」。昔は修験道場だったことの名残だろう。



こんな 山道をずっと上っていった。



矢印のところに西行歌碑。
この地図では、西行歌碑よりも上の方に桜のマークがあって、「オオヤマザクラ」という案内があったが、ここからの林道は一般車輌通行禁止であった。



通行禁止の林道
「オオヤマザクラ」を見学できなかったが、どっちみち夏の葉桜なので問題なし。



山から下ってきて振り返ったが、まだ山頂は雲に隠れていた。

















いろいろありましたが、なにも感想はありません。






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