すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


玉田野(岡山県高梁市)







この国土地理院の地図を見ていただきたい。
左上から右に大きく流れているのは備中国を代表する大河川である高梁川。
そして左下から右に流れて高梁川に合流している支流は玉川。
大雨が降れば増水した本流の流れに堰き止められる形で支流の水位が上昇し、行き場を失った水が氾濫する。
地図では、合流地点に三角のデルタ地帯があり、ここは洪水時の氾濫原である。水田と竹林の記号が付されている。


高梁市のホームページに地名解説のページがあり、玉田野の地名の由来について説明されている。【地名をあるく 43.玉】

それによると、古来、支流の流れが洪水で氾濫し、デルタ地帯に水が「たまる」意味から、「たまり田」「玉田」そして「玉田野」と呼ばれるようになったらしい。







現地を訪問


この辺りがデルタ地帯の氾濫原



右手の微高地に住宅が建設されている



これも氾濫原



玉川はこのように小さな流れであるが、洪水時はバックウォーターが発生のするだろう








そんな水がたまるような玉田野であるが、玉という字が縁起良いとのことから、大嘗祭関連の歌が詠まれている。


くもりなき月日にそへていとどしく 光まされる玉の村かな 善滋為政(大嘗会和歌)
※ いとどしく ・・・ ますます


水きよみ玉田の村に家ゐしてううるさなへは長ひこのいね 藤原家経
※ 長ひこ ・・・ 稲の異称


くもりなき玉田の野辺の日影 かざすや豊のあかり成るらん 藤原清輔(新拾遺和歌集)
曇りない玉田野のひかげかずらを頭上に飾ると、これは正に大嘗祭の
祝宴そのものの象徴だといえるであろうよ。
(おかやまの和歌/岡山県郷土文化財団)  


きびなるや玉田に生ふるつばき 幾よろず代の年をかもまつ 大嘗会和歌
吉備の国の玉田に生えている玉椿は、幾千年幾万年のめでたい年月を
待望していることであろうよ。(おかやまの和歌/岡山県郷土文化財団)
 


春立ちて霞たなびくあしたにも 曇らざりけり玉むらの里 藤原家経


玉の縁語である「くもらない」を用いる例が多い







え〜と、これは備中名所考の「玉田村」

(新日本古典籍総合データベース)

















玉田野の、高梁川の対岸の「広瀬」という地名も
広〜い河川敷という意味で、さもありなんと思います






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