すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


玉江(福井県福井市)






福井県福井市の八幡山の南東麓あたり、福井鉄道の花堂駅から江端駅にかけての一帯は、昔の浅水川の氾濫原であり、中世まで湿地帯が広がっていた。沼地には葦が群生し、様々な水鳥が飛来していたようだ。
北国街道はこの湿地帯を南北に縦断して通っており、旅人たちは風光明媚な風景を楽しんでいた。
ここは玉のようなきれいな川が流れていたのか、玉江という地名である。


この地では、夏に伸びた葦を刈る「夏苅り」が盛んに行われていたようで、『夏苅りの葦の玉江』として歌枕になっている。


夏刈玉江をふみしだき むれいる鳥のたつ空ぞなき 後拾遺和歌集
夏に刈った玉江の葦の刈り跡を踏みにじるように群がっている鳥は
飛び立つ気持ちもない。(歌枕歌ことば辞典)



夏刈のかりねも あわれなり 玉江の月の あけかたの空 藤原俊成(古今和歌集)



夏刈玉江の短夜に 見る空もなき月の影かな 忠房親王




花堂地区を流れる狐川と旧北陸道に架かる玉江二の橋。。



狐川。
湿地帯は近代に造成されてしまったようで、現在では住宅地となり、往昔の面影は想像できない。



玉江二の橋の南詰には玉江跡の史跡が整備されていた。





さて、奥の細道でこの地を訪れた松尾芭蕉は次の句を詠んでいる。


月見せよ玉江を刈らぬ先 松尾芭蕉
(私訳)芦の穂先を刈る前に月見をしよう! 


玉江二の橋の南詰の玉江跡碑の碑文に刻字


上の和歌にも葦と月が揃って詠まれているように、玉江は葦と月の名所だったようだ。


















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