すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


淡輪(たんのわ)(大阪府岬町)




「淡輪」は、大阪府の最南端の町、岬町にある。
岬町の深日(ふけ)は、万葉集以来の歌枕の地として有名で、今まで何度も深日に通ってきた。(釣りも含めて)

けれども深日の隣の「淡輪」も万葉故地であるとは、まったく知らなかった。

最近、「万葉を歩く 大阪の恋歌」(大川貴代著)という本を読んだのだが、その中で「淡輪」に関わる万葉歌が紹介されていた。





我も思ふ人もな忘れおほなわに浦吹く風の止む時なかれ 笠女郎(万葉集)
「私もこんなに思っています。あの人も私を忘れないで。淡輪の海岸に吹きつける
風が止むことのないように、私のことを想い続けて。」(万葉集を歩く/大川貴代) 
 


この中の「おほなわ」が淡輪のことらしい。
たしかに、深日は「ふけひの浦」であって『吹く』に通じ、「時つ風」や「沖つ風」が吹く浦として詠まれることが多く、その流れで隣町の淡輪にも浦風が吹いているというこの歌は、なんとも納得感がある。





さっそく淡輪に出掛けてきた。

【淡輪ヨットハーバー】

外国に来たような光景であった。


この日、浦風は吹いていなかった。



【淡輪 ときめきビーチ】

夏は海水浴客でにぎわう



【大阪府立青少年海洋センター】

ここは、学卒後に就職した会社の労働組合主催の宴会があったところ。
なつかしい。
20年以上も前もボロボロであったが、今はどうなっているのだろう。











江戸時代の観光案内書である「和泉名所図会」の淡輪の頁には、万葉集云々の記述はなく、その頃はまだ万葉故地として認識されていなかったようだ。
そのかわり、下のような恐ろし気な説明がなされていた。
 
[太閤記]云、関白秀次公の妾御小督局は、泉州淡輪なり。洛の三條河原に於て殺害せられる。
  辞世、
   生れ来て又帰るこそ道なれや雲のゆきゝのいともかしこし
(和泉名所図会)

















淡輪周辺の防波堤は、12月ごろのカレイ釣りで有名です。
(地元ではクリスマスガレイといいます)





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