すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
天竜川(静岡県)
急流の天竜川は「暴れ天竜」の異名を持つ。 このため多くのダムが建設され、現在では天竜川の流れは概ね人手によってコントロールされるようになった。 現在川筋は固定され、広大な河原の外側に、強固な堤防が築かれている。 こんな感じ! ![]() 池田の渡し(左岸)あたりから上流を望む。 ![]() 対岸が見えない (手前は広場で、川筋は木の向こう側にある) ![]() 下流方向。う〜ん、川とは思えない。 昔は大井川よりも水深が深かったらしく、おもに舟で渡していたらしい。 こんな感じ! (広重の東海道五十三次より、見付宿) ![]() Wikipediaより <十六夜日記> 二十三日。天中の渡りといふ、舟に乗るに、西行が昔も思ひ出でられて心細し。組み合せたる舟ただ一つにて、多くの人の往き来に、さしかへるひまもなし。 |
水の泡のうき世にわたる程を見よはや瀬の小舟さほもやすめず | 阿仏尼 |
水の泡のようにはかない浮世を渡っていくように、 天竜川の瀬にさしかかった渡し舟は、 棹を休めることなく漕ぎ渡っていく(古典文学の旅の辞典) |
よしさらば身を浮木にて渡りなん天津みそらの中川の水 | 海道記 | |
よしそれならば、我が身を頼りない浮き木として渡ってしまおう。 空まで続きそうな天竜川を(日本古典文学全集) |
有名ポイントなので、古来いろいろな歌が詠われてきたと思うのだが、「天竜川」の文字を詠み込んだ歌がなかなか見つからない。 つぎの弥次喜多の狂歌ぐらい。 |
水上は雲より出でて鱗ほど波のさかまく天竜の川 | 東海道中膝栗毛 |
天竜川は、雲のように高い山から流れ出て、鱗のように波が逆巻いている (古典文学の旅の辞典) |