すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
東北院(京都市左京区)
この世の栄華を極めた藤原道長が、晩年に西方極楽浄土を願って建立したのが法成寺。摂関期の最大の寺院であったとされるが、何度も大火や戦火に遭い、廃絶した。 その法成寺の敷地の北東の隅にあった別院が東北院。 もちろん、西北院もあったらしい。 ただし、東北院が有名になったのは、歌人の和泉式部が出家後に東北院の小御堂に住み着き、庭に「軒端の梅」を手植えしたこと、そして「軒端の梅」をモチーフにして室町時代に世阿弥が能の「東北」を作ったことで、東北院は古典文学・古典芸能の聖地として現在まで語り継がれるようになったもの。 とはいえ、もともとの法成寺のあった場所は御所に近い、現在の上京区荒神町あたりであったが、その後に東北院は二度も移転し、現在は鴨川を渡り、吉田山を越えたところにある。 そんな現在の東北院を訪ねてみた。 【東北院】 ・・・ 京都市左京区浄土寺真如町 ![]() なんとも殺風景な寺が見えてきた ![]() どうも手入れがされていないようだ 立ち入ることもできない ![]() 「東北院と軒端の梅」の謡曲保存会による駒札があった ![]() 玄関から中を覗いてみた たぶん軽自動車の後ろの木が「軒端の梅」だろう もちろん和泉式部の手植えではない いやはや、古典文学と古典芸能の聖地であるが、それだけでは21世紀の世の中は何かと難しいようだ。 |
影見ても うき我涙 落ちそひて かごとがましき 滝の音かな | 紫式部(続後撰集) |
春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる | 凡河内躬恒(古今和歌集) |
むめ(梅)の香を 君によそへて みるからに 花のをりしる 身ともなるかな | 和泉式部続集 |
むめ(梅)が香に おどろ(驚)かれつつ 春の夜の闇こそ 人はあくがらしけれ | 千載和歌集 |