すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


戸隠(とがくし)(長野県長野市)





《 戸隠伝説 》

日本の神話時代、天の岩戸にこもっていた天照大神を引きずり出したあと、天之手力男神(あめのたぢからおのかみ)が岩戸を投げ飛ばしたところ、信濃国まで飛んできて、戸隠山になったという。


そんな由緒深い戸隠の誕生譚について、私は全然知らなかった。

ただ、能「紅葉狩」の謡跡ということは知っていた。


能「紅葉狩」は、ネーミングから受ける印象は、穏やかな秋の日に紅葉を観賞する小宴が催されて、それはそれは愉快なことのようだが、実はちょっと違う。


あらすじは割愛するが、
ところは信州戸隠山、主人公は美女と宴会し、酒に酔って寝てしまった。実は美女は鬼が化けたもので、主人公は鬼退治に向かうというもの。


信州版の酒呑童子とのこと。


信濃なる北向き山の風誘い 妖し紅葉疾くと散りけり 平維茂『紅葉狩』
平維茂はシテ



鬼すだく戸隠のふもとそばの花 小林一茶



戸隠山は鬼の巣窟だったようだ

















さて、今回戸隠へ訪問したのは2021年夏のこと。
ちょうど台風が二つ発生し、追いかけるようにして日本列島付近を通過。この影響で天気は非常に不安定になり、各地で猛烈な雨を降らせた。











と言って、サラリーマンの限られた休暇のなかで組んだスケジュールなので、とりあえず計画通りに出発した。




戸隠神社中社の大鳥居
車の中から撮影




中社の拝殿
猛烈な雨にもかかわらず、傘を持ってくるのを忘れた。




拝殿の所から戸隠の三本杉を見下ろす。
二本杉はよくあるが、三本杉は滅多にない。



中社の案内板
ゆっくり見たかったが、拝殿で拝んですぐに車へ戻った。








そんな戸隠を詠んだ歌は意外に少ない



吹きおろす峰のあらしもまぎれゆく ひびきや谷の戸隠の山 尭恵法印(北国紀行)



三篶(みすず)刈る 信濃の国 石はしる 水内県(みのちあがた)に ありたたす 
戸隠の山 神の山 山がらか (うべ)(かん)さび 神からか うべも貴き 
梓弓 原野(はらぬ)ゆ見れば 五百重山(いほへやま)い立ちへなりて 遥々に 
富士の山見ゆ 名ぐはし 飯縄(いづな)の山も この山の おやじ連峯(つるね)ぞ 
ぬば玉の 黒姫山も さしなみの 隣の山ぞ 群山(むらやま)も よりて仕ふる 
戸隠の 神の御稜威(みいつ)を (かしこみ)て をろがみ(まつ)り (ぬか)づきまつる
荒木田久老(戸隠百首)


戸隠の山(いほり)朝戸出(あさとで)の真袖に払ふ天の白雲 荒木田久老(戸隠百首)


伝へ聞く薬()まねど白雲の棚曳く上にわれは来にけり 荒木田久老(戸隠百首)




久方の天の岩戸のあけしより 雲井にのこる有明の山 香川景樹










善光寺道名所図会「戸隠山中院」
(右)

(早稲田大学図書館)




善光寺道名所図会「戸隠山中院」
(左・中)

(早稲田大学図書館)




善光寺道名所図会「戸隠山紅葉狩名所之図」

(早稲田大学図書館)













戸隠について、いろいろと書くことを準備していましたが
もうこれぐらいで終わります





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