すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


十市の里(奈良県橿原市)





「十市」とつくからには、額田王の娘である十市皇女となにか関係あるのかな。十市皇女が生まれたところとか死んだ場所とか、十市皇女の領地であったとか、なにか繋がりがあれば、それはそれで訪問も楽しいものになるのだが。
あまり深く調べたわけではないが、十市皇女との繋がりは分からなかった。


「十市(とおち)」という地名は奈良時代以前からあるらしく、十市御縣坐神社という式内社が集落に鎮座している。また一帯はかつては十市郡であった。
十日ごとに市が開かれ、人々が集まってきて賑わった場所だったのだろうか。



いずれにせよ、往古から由緒がある土地柄だったようだ。




ところが、この十市の里は万葉集では登場しない。
平安時代になってから詠まれていて、しかも「十市」=「遠い」と掛けられて、京の都から「遠い里」として使われている。




「十市の里」関連の歌


ふけにけり山の端近く月さえて 十市の里に衣打つ聲 式子内親王

近くの山の端の月と、遠くの十市の里との対比



暮ればとくゆきて語らむあふことの 十市の里の住みうかりしも 拾遺和歌集

十市の里は遠すぎて住みにくい






「十市の里」に行ってきた。



十市の里の集落



これも



「十市城之跡」の石碑
十市城は、鎌倉時代から戦国時代にかけて十市氏の居城だった。



十市城跡から東方向。遠くの山は三輪山かな?









じつに残念なのが、もともと訪問を予定していた十市御縣坐神社(式内社)に行かなかったこと。まったく忘れていた。
境内には十市城主の十市遠忠の歌碑があったのに。


かすみきて天のかぐ山明くるよりとおちの里に春をしるかな 十市遠忠(続 群書類聚)


十市遠忠は室町時代の十市城主。文武に優れていたらしい。















十市御縣坐神社には再訪しようと思います。






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