すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


り浦(京都府伊根町)





風をいたみ思わぬ方に泊りする 海士の小舟もかくやわぶらん 源景明(拾遺和歌集)


「泊り浦」は、江戸時代に編纂された丹後地方の地誌である丹後旧事記に丹後の名所として掲載されている。

「泊り浦」の歌として上記の歌が紹介されていた。

この歌は平安後期の堤中納言物語の短編、「思わぬ方にとまりする少将」に繋がる。大納言の姫君の元へ通っていた少将は、あるとき女を間違え、そして「思わぬ方に泊まって」しまったもの。

そんな平安王朝の雅な笑い話と、この丹後半島の寒村が歌で結びついている。じつに楽しい話である。











■ 現地へ訪問


丹後の泊り浦に行ってきた
現在の住所は、京都府与謝郡伊根町泊


泊海水浴場
真夏なのに海水浴客はほとんどいなかった。



左から伸びている松の枝は、「そひねの松」
むかし、貴人がこの松陰で夜を明かしたという逸話がある



泊の湾
船が停するのに適した湾だったから、になったのかな





丹後旧事記にはもう三つの歌が掲載されている



夕汐の磯こす波のまくらとて 風に泊りの日数をぞふる 野宜左大臣(続拾遺和歌集)


見渡せはみとりの空に波かけて 泊りもしらぬ船出しにけり 大炊御門右大臣(新拾遺和歌集)


浦々の末の泊りは知らねとも 同し磯辺に出るともふね 前関白左大臣(続千載和歌集)












堤中納言物語は、コメディの短編集で気楽に読めます。
その中の一編、「花桜折る少将」は、美しい姫君に恋をし、姫君が入内する前に盗み出そうとしますが、間違えて姫君の祖母を連れてきてしまうというコメディです。








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