すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


登美志山(とみしやま)(広島県三次市)







日本全国に、郷土(きょうど)富士と呼ばれる山がある。

円錐型やお椀型で富士山に似た山であったり、独立峰であったり、地域で一番高い山であったり、由来はいろいろあるが、現地に行って実際に見てみると「なるほど!」と感得するような山容であることが多い。地元の人にとって『おらが富士』である。

今回採り上げるのは、備後小富士と呼ばれる登美志(とみし)山。標高471メートル。地元三次市吉舎町のシンボル的な山で、なんと「とみし」は『富士(とみし)』から転じたもの。地元の人々の登美志山に対する思い入れが窺える。

当地に伝わる伝承では、承久の乱で隠岐島に流される途中、後鳥羽上皇が登美志山を見て次のような歌を詠んでいる。


知らで見ば富士(ふじ)とや言わん備後なる富士(とみし)の山にかかる白雲 後鳥羽上皇


皆人の富士(ふじ)と知られて傭後なる富士(とみし)の山の峰の白雪 後鳥羽上皇



どちらも「ふじ」と「とみし」を漢字で掛けている。本家の富士山と同じように備後の登美志山にも白雲や白雪がかかっている様子を伝えている。










え〜と、こんな調子でこのページを書き進めてきたが、実際の訪問は大失敗だった。

郷土富士と呼ばれるくらいだから、どこからでも眺めることができるだろうと高をくくっていたのが原因。

登美志山は、周りの山から突き抜けて聳え立つ孤峰で、悠然と裾野を広げる山容を想像していたが、実は標高500メートル足らずの山で、手前の山の方が邪魔となってなかなか姿を見ることができなかった。

最後、国土地理院の地形図を頼りに谷筋からの撮影を狙ったが、車で入っていくような道路ではなかったので断念した。





赤い矢印の角度で谷筋が開析しているので、ここを遡ると登美志山を真正面から撮影できるものと期待して車で入っていった。
(地図上では「富士(とみし)山」と表記されている)



ところが、どうも車の走行は厳しそうな山道であった。
車を置いて歩いて行くのは、虫やクモやヘビが怖いので断念(8月に訪問)



谷筋の様子、ジャングルのように感じた
晩秋や早春に来ていたら、また違う展開になっていたかも















再びこの地を訪れることはなさそうです





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