すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


鳥飼(とりがい)(大阪府摂津市)




何かの本に、「鳥飼」の地名は、古代に鳥の飼育を職として朝廷に仕えていた人々が住んでいた場所との説明があったが、それ以上興味を覚えなかった。

新幹線の車両基地である「鳥飼基地」のイメージが頭の中で強固にできあがっていて、鳥飼と聞けばすぐに大阪モノレールから見える新幹線車輌が整然と並ぶ光景が脳裏に浮かび上がる。

ただ、今回は「大和物語」にまつわる歌の歌碑が鳥飼にあるとの情報を得たので、あるヒマな日曜日に訪問してきた。




昔から、この辺りは淀川を望む風光明媚な土地として、都の貴族たちの別荘地になっていたそうな。



淀川は洪水ごとに流路を変え、昨日の川筋が今日の後背湿地に変わっていたり、自然堤防ができたり決壊したり、、、、
とにかく大きく変わってきたようだ。



いまは工場と倉庫と住宅が混在するような地域になっている。





こんな鳥飼を歌った万葉歌


洗ひ衣 取替川の 川淀の 淀まむ心 思ひかねつも 万葉集




 





「大和物語」では、宇多天皇が鳥飼院に御幸した際に、大江玉淵の娘を召して「鳥飼」をテーマにした歌を詠ませた話がある。
大江玉淵の娘の歌は、


緑かひある春に逢ひぬれば霞ならねどたちのぼりけり 大和物語


で、宇多天皇は大層お褒めになって、衣服を与えたという。また同席していた貴族たちもこぞって衣服を与えたため、大江玉淵の娘は大変な衣服持ちになったという話。
この歌の冒頭、「あさみどりかひある〜」に鳥飼が詠み込まれている。
とてもテクニシャンな歌である。



摂津市鳥飼上4丁目
阪急バス「摂津ふれあいの里」駅横に、
大和物語の歌碑と「鳥飼院跡」碑










大和物語はほとんど読んだことがありません。



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