すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


海柘榴市(奈良県桜井市)




海柘榴市は「つばいち」と読む。

古代、海柘榴市は四方からの街道が交差する場所として大きな市場があった。人々も集まり、とくに若者たちの歌垣の地となっていた。歌垣とは、若者が異性を求めて集まり、恋の歌を交わすもので、古代のカップリングパーティのようなもの。

このため海柘榴市を詠んだ歌は出会い系の歌が中心である。


紫は灰さすものぞ海柘榴市の八十の衢に逢へる子や誰れ 万葉集
 紫の染料は灰汁を入れるものよ。灰にする椿の、海石榴市の八十の辻
に逢ったあなたは何という名か。(「万葉集」中西 進 講談社文庫) 
 

返し
たらちねの母が呼ぶ名を申さめど道行く人を誰れと知りてか 万葉集
 なるほど名を言えとおっしゃれば、おかあさんがわたしを呼び寄せるときに
言われる名を申しもしましょうが、いったい、そうおっしゃるあなたは、
どこの誰ですか。みちで行き会ったあなたを、誰だ、とも知らないで、
申し上げるわけにはいきません。
(「大和万葉旅行」堀内 民一 講談社学術文庫)



いやはや、見事な相聞歌である。
「紫は灰さすものぞ・・・」の部分については超傑作だとの評判が高いが、本当にそのとおりだと思う。




海柘榴市の八十の衢に立ち平し結びし紐を解かまく惜しも 万葉集
あの海柘榴市の里の、道のたくさん会う辻で、あっちこっちと歩き回って、
その時会った人が、結んでくれた紐を解くのは、あまり惜しいことだ。 

(「大和万葉旅行」堀内 民一 講談社学術文庫)






現在の海柘榴市は、三輪山麓の山辺の道沿いに住宅地が続いている。
昔の市場の面影はないが、街道沿いの旧村らしい穏やかな佇まいで、とてもよかった。














海柘榴市観音堂














いろいろ書こうと思ってましたが、こんなかんじで終了です






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