すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


鼓ヶ滝(つづみがたき)(熊本市西区)





滝の音が鼓を打った音と似ているとして、鼓ヶ滝と呼ばれるようになったらしい。
鼓って、能楽に出てくる、あの鼓なのかな。
ポンポン!なのか、トントン!なのか、よく分からないが、滝の音など全国どこの滝も同じようなものだろう。
そんなツッコミを入れたくなるような普通の滝であった。




これが鼓ヶ滝
右が男滝で、左が女滝
道路沿いあった。


ごく一般的な滝で、音も普通で、わざわざ大阪から訪ねるほどの場所ではないような、そんな滝であった。



ところが、この鼓ヶ滝は肥後国を代表するような歌枕であるらしい。
いろんな資料にそのように載っているし、WIKIPEDIAの「歌枕の一覧」のページでも肥後国の歌枕とされている。
この程度の滝が中世の時代にわざわざ都にまで肥後国の名所として伝わっていたとは本当に驚きだ。
肥後国にはもっと他にいろいろな、肥後国ならではの景勝地があるし、適当なストーリーを作って歌枕の地に仕立て上げたらよかったのにと、勝手に思ってしまう。
こんな具合なので、せっかくの歌枕なのに鼓ヶ滝の前の道路はこの通り、全く名所旧跡の「らしさ」がない。(Googleのストリートビュー)


ストリートビューの右手の橋の下が滝。




こんな鼓ヶ滝を詠んだ歌

音にきく つづみが滝を うちみれば ただ山川の なるにぞ有ける 拾遺和歌集

山川は わかるるふえの あればこそ つづみのたきに あわもまふらめ 重之集


肥後国を代表するような歌枕であるのだから、いろいろな歌があるのかなと探したが、見つけたのは上の二首のみ。
ただし一首目は「音に聞く〜」とあるので、往時はそれなりに有名で、よく詠まれたのであろう。



ただし返す返す残念なのは、肥後国の鼓ヶ滝が遠方であり、歌枕に具体的なイメージがなかったため、後世に西行たちによって摂津の歌枕に改変されている。
能「鼓滝」では「音に聞く〜」を「津の国の〜」に変えて、

津の国鼓の滝をうちみればただ山川のなるにぞありける 能「鼓滝」

と詠んでいる。

摂津国の有馬にも鼓ヶ滝があって、今となっては断然有馬の鼓ヶ滝の方が有名である。














何から何まで残念な歌枕です。






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