すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


雲林院(京都市北区)




古典文学や謡曲の中の雲林院と、現在のギャップが大きすぎる。


先に現在の雲林院


一般的な京都の街中にある寺院といったかんじの門。



中庭。
きちんと手入れされていた。



お堂。



え〜、これだけ〜!?









もとは淳和天皇の別荘であった紫野院を、のちに僧正遍照が寺院として改め、雲林院とした。
当時は広大な敷地を誇り、桜や紅葉の名所として多くの文人が通ったらしい。
その後、鎌倉時代から衰退をたどり、大徳寺の塔頭となったものの、応仁の乱で灰燼に帰してしまった。
江戸時代に復興されたが、往昔の姿を偲ぶよすがもない。









雲林院と古典文学について



【僧正遍照】

雲林院は僧正遍照が寺院として興した。雲林院はまさに僧正遍照ゆかりの地と言えよう。(知らなかった)


雲林院のみこの、舎利会(さりゑ)に山にのぼりて
帰りけるに、さくらの花のもとにてよめる」

山風に 桜吹きまき乱れなむ 花のまぎれにたちとまるべく 僧正遍昭



天つ風雲のかよひぢ吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ 僧正遍昭(百人一首)
天を吹く風よ、天女たちが帰っていく雲の中の通り道を吹き閉
 ざしてくれ。乙女たちの美しい舞姿を、もうしばらく地上に留め
 ておきたいのだ。(小倉山荘ホームページ) 


雲林院の境内に歌碑





【源氏物語】

「賢木」の巻で登場。藤壺の中宮から冷たくされた源氏が、へそを曲げて雲林院に籠る。そこで天台宗の経典60巻を読んで、わからないところを僧たちに聞いたりしながら過ごしている。

なお、紫式部の生地は紫野との説もある。紫野から紫式部の名が付いたという。紫式部は普段から雲林院には通っていたようだ。




【西行】

「雲の林」とは桜が満開になっている様子を表わしたもの。

これやき雲の林の寺ならん 花を尋ねるこころやすめん 西行




【古今和歌集】

雲の林を見わたせば法にあふちの花咲けにけり 古今和歌集




【伊勢物語】

伊勢物語と雲林院の関係は、謡曲「雲林院」による。
摂津芦屋の里に住む公光という若者は伊勢物語の大ファン。夢の中で在原業平と出会ったことから、京都の雲林院にやってくる。夜になり業平の霊が現れて二条后との逃避行の逸話などを話し聞かせるというストーリー。

伊勢物語フリークとしては外せない。













滞在時間は30秒程度でした。






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