すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


宇津山(静岡県藤枝市)




伊勢物語の聖地、宇津ノ谷。
在原業平は東下りの途上、最大の難所と云われた宇津ノ谷を越えていく場面で、偶然にも都へ上る知人にバッタリと会う。
そして業平は都に残してきた女への文を言付ける。


駿河なるうつの山辺のうつつにも 夢にも人に逢はぬなりけり 在原業平(伊勢物語)


 このエピソードに後世の文人たちは大いに興味をそそられ、宇津ノ谷の峠は東海道往来の際の主要な歌詠みポイントとなった。









「宇津ノ谷」へ訪問した。

まずは国道一号線バイパスの道の駅「宇津ノ谷峠」


手前の山の奥に宇津ノ谷峠が続く。
国道はトンネルに入る。


峠の入口に「つたの細道公園」が整備されている。


伊勢物語で、

宇津の山にいたりて、わが入らむとする道はいと暗う細きに、楓は茂り、もの心細く・・・

から「つたの細道公園」の名が採られたようだ。


この奥が中世の峠道。峠に在原業平の歌碑があるらしい。
この先には行ってない。


なんと、ここには「宇津ノ谷」にちなんだ代表的な歌の板碑が並んでいる。

下の一覧表にまとめた。


夢路にもなれし屋とみるうつつには うつの山辺のふける庵 藤原 俊成
都にも今や衣にうつの山 ゆふしもはらふのしたみち 藤原 定家
袖にしも月かかれとは契りをかず 涙はしるやうつの山 鴨 長明
ひと夜ねしかやの松尾の跡もなし 夢かうつつか宇津の山ごえ 兼好法師
駿河なるうつの山辺のうつつにも 夢にも人に逢はぬなりけり 在原 業平
わが心うつつともなしうつの山 夢にもとほき都恋ふとて 阿仏尼
山中回首費吟呻
遺愛蔦楓秋又春
今古冥々名与境
業平歌後更無人
林羅山
古し世の跡もとどめず高ねまで 大路開けぬつたの細道 下田歌子
天翔る鳥も憩えなわが里の の細道いまさくら時 片山静枝



その他、お気に入りの歌を二、三記す。

ことの葉もしげしとききしつたはいづら ゆめにだに見ずうつの山こえ 後深草院二条(問わずがたり)


旅寝する夢路はゆるせうつの山 関とは聞かず守る人もなし 藤原 家隆


都辺に夢にもゆかん便あらば 宇津の山風吹きもつたへよ 源 実朝






 











東海道の故地の中でも第一級レベルの場所でした。





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