すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
渡辺橋(大阪市北区)
渡の辺や大江の岸にやどりして雲井に見ゆる生駒山かな | 良暹法師(後拾遺集) |
歌枕フリークとして、 ひとつの歌の中にどれだけの歌枕が詠い込まれているのか、大変興味あるところ。 この歌には三つの歌枕が入っており、しかも三つの歌枕を一望できる場所がある(はず)。 四ツ橋筋に架かる渡辺橋と、御堂筋に架かる大江橋、その背景に生駒山、これらを見渡せる場所があれば、作者の良暹法師が見た光景と重なるかも! たまたま仕事で堂島に行ったので、どんなものか見てきた。 結論から言うと、 ビルの上からでないと、三つの歌枕を包含した写真は撮れない、しかも空が霞んでいると生駒山が見えない、これらがわかった。 ![]() 渡辺橋から東を望む。正面の阪神高速の向こうに大江橋がある(はず)。 生駒山は見えそうにない。 よくよく考えると、「渡辺」は、大江の「渡しの辺り」という意味らしいから、大江の真近くにあったはず。 しかも大江は三軒茶屋付近のこととのことで今の天満橋にあたる。 このため、この撮影ポイントは文字通りピンボケと言える。 といって、そんなふうに考えると非常に窮屈になってくるので、何でも柔軟に解釈して歌枕巡りをしていく所存。 さてさて、 一つの歌の中に三つの歌枕が入っている歌は、下記のようなものがある。 |
大江山いく野の道は遠ければまだふみもみず天橋立 | 百人一首 |
これは完ぺき!百人一首に選ばれるだけある。 ところが衛星写真でもない限り三つの歌枕を含んだ写真を撮る ことはできない。 |
わぎもこに猪名野は見せつ名次山角の松原いつか示さむ | 万葉集 |
地域的には近いところであるが、過去と未来に分かれている。 |
住吉の得名津に立ちて見渡せば 武庫の泊ゆ出づる船人 | 万葉集 |
得名津は住吉から掛かっているので厳密には三つとは言えない。 |
三つの歌枕まではよくあるが、四つは珍しい。 これはどう? |
常陸なる駿河の海の須磨の浦に波立ち出でよ筥崎の松 | 源氏物語 |
気が狂ったような歌であるが、これは源氏物語の「常夏」で、 弘徽殿女御の女房から近江の君への返歌。 ちなみにその前に近江の君が弘徽殿女御に送った歌は 草若み常陸の浦のいかが崎いかであひ見む田子の浦波 |
渡辺橋の風景写真![]() この辺りの風景も変わった。 ![]() 橋の上。これは四ツ橋筋。 ![]() 渡辺橋から東向き。堂島川。 |
まさに大阪のオフィス街でした。
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