すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


矢橋(滋賀県草津市)






近江八景「矢橋帰帆」(歌川広重)

(WIKIPEDIA)

有名な矢橋帰帆の絵図は、夕方に矢橋の湊から大津方面に帆船が帰っていく風景が構図となっている。
静かな琵琶湖の水面、はるかに聳える比叡山、対岸は打出ノ浜だろうか、夕焼けの空と薄暮の湖岸のコントラストも良い。




2017年冬の入相の頃、同じ構図で写真を撮ってみた。


矢橋帰帆島から大津方面を撮影。
帆を上げた船はもちろん、エンジン付きの小船に至るまで、まったく船は見当たらなかった。



iPhoneのパノラマ撮影。
いや〜素晴らしい!


「東海道名所図会」にも感動的な説明文が記載されている。
「この浦も淡海八景のその一つにして、風景斜めならず。向こうに比良・四明の高嶺、日吉の神社、戸津・坂本の人家、志賀浦、唐崎の松、打出の浜、大津・粟津の城、粟津原まで残りなく鮮やかに見えわたりて、風流の勝地なり。」











東海道の近道として、矢橋から打出の浜まで船を利用すれば、徒歩で瀬田の唐橋を経由するよりも早く着くことができたらしい。


東海道名所図会「矢橋」(早稲田大学図書館)

草津で東海道から分かれて矢橋の湊に至る。この挿図は矢橋の湊の様子を描いたもの。





こんな矢橋を詠んだ歌


近江のや 矢橋の小竹を 矢はがずて まことありえむや 恋しきものを 万葉集


真帆引きて矢ばせに帰る舟は今打出の浜をあとのおひ風 近衛関白時熙公



次はことわざ

もののふの矢橋の船は速かれど急がば廻れ瀬田の長橋 宗長(連歌師)

「急がば回れ」はこの歌が発端となったらしい。





かくれけり師走の湖のかいつぶり 松尾芭蕉


矢橋帰帆島公園の駐車場に句碑












なんとも満足感の高い訪問でした。





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