すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


矢作川(愛知県岡崎市)




矢作川は長野県の中央アルプス南端に源を発し、愛知県と岐阜県との県境を流れ、三河平野に出て、碧南市と西尾市の境で三河湾へ注ぐ。延長117kmの一級河川。三河国の名は矢作川、男川、豊川の三大河あることによる。


なんと平安中期の歌学書である能因歌枕にも三河国の歌枕として矢作川が紹介されている。


矢作川は、日本武尊東征や太平記で登場したりするが、とくに有名なのが豊臣秀吉と蜂須賀小六が出会った矢作橋のエピソードだろう。その時代に橋は架かっていなかったので完全な作り話であるが、現在では橋のたもとに二人の「出合之像」が建てられている。





この像は東海道が矢作川を渡る矢作橋の西詰にある。
矢作橋は、慶長6年(1601年)に架けられた。江戸時代では日本最長の大橋であったようだ。


東海道名所図会「矢矧橋」 (早稲田大学図書館)



広重 東海道五十三次「岡崎」 (WIKIPEDIA)



現在の矢作橋、鋼鈑桁橋

上の絵の構図とは逆向きであるが





こんな矢作川、矢作橋、そして矢作の里を詠んだ歌


長居せそこころしていよあづさ弓矢はぎの川の鷺のひとむら 東国名勝志の賛

川べりの鷺たちよ、ここは矢はぎという川だけに、あんまり長いこといると、矢で射られてしまうよ、という意味か。近くの岡崎の遊郭で長く居続ける客をもじったものらしい。



矢矧川うへのにたてるかば桜いつか軒ばにならむとすらむ 藤原親隆


真すぐにとほれとこそはわたすらん矢矧の川の橋の板をも 烏丸光広


のどかなる矢矧の里は日の光出で入るまでの名にぞありける 覧富士記


梓弓やはぎの里のかば桜花にのみゐる我こゝるかな 藤原為家

※梓弓(あずさ弓)は矢に掛かる枕詞





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矢作橋から上流を望む














矢作川は、私の住んでいる大阪では知名度が低いです。






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