すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


山猫軒(岩手県花巻市)





宮沢賢治の「注文の多い料理店」、
山奥で狩猟していたブルジョワの二人は道に迷い、たどり着いた一軒のレストラン、それが山猫軒。
花巻市の郊外にその山猫軒が再現されている。
宮沢賢治はそれほど好きな作家ではなかったし、今もそうであるが、東北岩手と言えば宮沢賢治、宮沢賢治と言えば「注文の多い料理店」なので、花巻に行ったときに山猫軒に行ってきた。

そして山猫軒に着いて、びっくりしたのは外国人の観光客がとても多かったこと。日本人なら誰でも「注文の多い料理店」を学生時代に習って知っているはずで、ここでは郷愁に近い気持ちを禁じ得ないものであるが、いったい外国の人たちはここに来て何を思うのであろうか。
東北には大自然とか、もっと分かりやすい観光地がほかにあるのだから、そちらに行った方が楽しいのではないかと思う。




■山猫軒とはこんなところ


童話から想像通りの建物



「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」と童話の中のフレーズ。



これも



まさに本文と同じ内容の看板があった。

“その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。そして玄関には
  RESTAURANT
  西洋料理店
  WILDCAT HOUSE
  山猫軒
という札がでていました。

(注文の多い料理店)



山猫軒の中。手前にお土産屋があって、その奥にレストランがあった。









さて童話「注文の多い料理店」とはどんな内容だったのかというと、


山奥で道に迷ったブルジョア二人が山猫軒を見つける
どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません

そして硝子戸の裏側には、
ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします
とあったので、二人は大喜び

扉を開けようとすると、こう書いてあった
当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください
二人は「なかなか流行っているんだ、こんな山の中で」と感心

次の扉には
お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください
二人は「これはもっともだ」

次の扉の内側には
鉄砲と弾丸(たま)をここへ置いてください
また次の扉
どうか帽子と外套と靴をおとり下さい
そして
ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いてください
二人はそれらを金庫の中に入れてパチンと錠を掛けた
壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください
二人はクリームを塗りながら、こっそりと食べた
料理はもうすぐできます。十五分とお待たせはいたしません。すぐたべられます。早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振ふりかけてください
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう」「下女が風邪でも引いてまちがえて入れたんだ」
いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさんよくもみ込んでください
「どうもおかしいぜ」「ぼくもおかしいとおもう」
ようやく気付いた二人はがたがた震えだしてモノが言えなくなった。
店の奥からは、
さあ、早くいらっしゃい
と恐ろしい声がして、しまいに二人は泣き出してしまう。


そんなところへ突然二人の飼い犬が飛び込んできた。
するとレストランは煙のように消えてしまった・・・。






とまあ、こんなストーリーである。




今回改めて読んでみて、特に何も思わなくなったのは、年のせいで感受性がなくなったのだろう。

子供の頃、初めて読んだ時は最後のシーンなど、本当に恐ろしいと感じたものだ。
















「注文の多い料理店」のネーミングは絶妙だと思います。






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