すさまじきもの ~歌枕★探訪~ |
いにしへゆ人の言ひ来る |
万葉集 | |
昔からずっと人の言い伝えて来た、老人が若がえるという水であるよ。 名にそむかぬ滝の瀬よ。(奈良県立万葉文化館) |
万葉集 | ||
田跡川の激流が清らかだから、昔から長く宮として人々は仕えて来たのだろうか。 多芸野のほとりに。(奈良県立万葉文化館) |
美濃国の「養老」は、四番バッター級の歌枕だと思っていた。 なぜなら、 ・落差32メートル、幅4メートルもある豪壮な滝があり、 ・万葉集に二首も詠まれており、 ・元正天皇、聖武天皇の二人の天皇が行幸した歴史があり、 ・元正天皇は、「もって老を養うべし」と詔を出し元号を「養老」に改め、 ・滝の水が酒になった親孝行譚「養老孝子伝説」が伝わり、 ・菊水という不老長寿の泉が湧き、 ・世阿弥は謡曲「養老」を書き上げ、 ・多くの文人墨客が滝見物に訪れ、 ・葛飾北斎も歌川広重も養老の滝を描き、 ・昭和時代に設立された居酒屋チェーン「養老乃瀧」は、かつて「つぼ八」「村さ来」と並んで居酒屋の御三家と呼ばれたという由緒がある。 このように、歌枕の地としての素養は十分にあるのだが、どうも歌枕として定着しなかったようだ。 万葉集の二首も「養老」という地名を直截に詠み込んでいない。 『歌枕歌ことば辞典』にも「養老」は歌枕として記載されておらず、『和歌の歌枕地名大辞典』には「滝の瀬」「多芸の行宮」「多芸野の上」「田跡川の滝」の各項目があるが、証歌は上記の万葉歌であった。 「養老」は親孝行に通じるが、親孝行は今一つ和歌の題材には合わなかったのかも知れない。 また、滝の水が酒になるのだが、酒も和歌の主題としてあまり用例がない。酒はやはり漢詩の方が相応しい。養老の滝は漢詩で多く詠まれている。 養老の滝は、神仙境の世界にあり、漢詩のリズムこそ詩的感興を励起させるに適任であろう。 (と言っても、手元に養老の滝を詠んだ漢詩を集めていないので、説得力がないが) ここで Google の AI による概要を見てみよう 検索は「養老 歌枕」
恐るべし、AI。 もし学生時代に戻れるなら、AI を駆使してすごい卒論を書けるだろう。 ■ 現地訪問 ![]() 養老の滝一帯は「養老公園」として整備されていた。 滝までのハイキングコースや各種スポーツ施設がある。 注意したいのは、滝の近くの駐車場は有料で、下の方の駐車場は無料。ただし滝まで1キロほど坂道を歩くことになる。 ![]() 無料の駐車場から歩き出してすぐのところに「養老孝子源丞内の碑」があった。源丞内は親孝行に励んだ伝説上の息子。 ![]() 養老の滝と言えば酒で、酒と言えば瓢箪 ![]() 「親孝行のふるさと館」 ![]() 養老神社 ![]() 神社の境内にあった「菊水泉」、元正天皇が浴した美泉。 菊の香りがして、飲むと肌が美しくなるとか。 ![]() 滝から流れる養老川、古称は ![]() 新緑の紅葉が美しい ![]() 滝まではハイキングコースとなっていて、渓谷美を楽しめる ![]() ゴールデンウィークに行った、朝9時ぐらいだったが、観光客はほとんどいなかった ![]() 養老の滝が見えてきた ![]() 実にフォトジェニックである ![]() これが養老の滝 ![]() 元正天皇、聖武天皇の行幸より今に至る千年有余年の浄刹である ![]() 滝に打たれる行者かな ![]() 養老の滝のすぐそばにあった小さな滝 |