すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


水分神社(奈良県吉野町)

水分(みくまり)とは分水嶺の山のことで、言わば全国のどこの山にも存在する。
ただし古典の世界では圧倒的に吉野の「水分山」が幅を利かせている。吉野の水分山は「青根ヶ峰」のことで、古来さまざまなシーンで和歌に歌い込まれている。
青根ヶ峰からは東西南北に音無川、秋野川、丹生川、象川が流れ出している。
この青根ヶ峰に鎮座したのが「吉野水分神社」。
昔は青根ヶ峰の山頂付近にあったとのことだが、参拝しやすいように後世に上千本あたりに移転されたとか。



 神さぶる 岩根こごしき み吉野の 水分山を 見れば悲しも 万葉集
いやはや、神々しいほどの岩がむき出しになっている吉野の水分山まで来たら、
深い感動をおぼえたよ





吉野水分神社



晩秋に訪問した。
桜の季節に行けばきれいだろう。



特殊な建築様式らしく「水分造り」と呼ばれている。
素人にはよくわからないが、荘厳な雰囲気があった。






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 さてさて、近世に「みくまり」が「みこもり」(身籠こり)となまったことから、「子守神社」、「子授けの神様」として信仰を集めた。このなかで、著名人も吉野水分神社への子授け祈願の結果、生まれている。

 ■「豊臣秀吉」の祈願により、「豊臣秀頼」が誕生
 ■「本居宣長の両親」の祈願により「本居宣長」が誕生

このように、実績がある。


本居宣長は後年吉野山を訪れて、水分神社へ参っている。
このときの歌
吉野山花は見ぬとも水分の神のみまへをおうがむがよさ
水分の神のちかひのなかりせば、これのあが身は生れこめやも
父母の昔思へば袖ぬれぬ水分山に雨はふらねど




秀頼が生まれて喜んだ豊臣秀吉が詠んだ歌
水分の 神の誓ひの なかりせば これのあが身は 生まれこめやも






実はこの日、吉野山の下千本の駐車場から奥千本の西行庵を目指して歩き始めましたが、初めて来た吉野の、土産物屋さんの充実さに驚いた妻と娘が「買い物時間がほしい」と言い出したので、結局水分神社で折り返しました。








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