すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


湯田温泉(山口県山口市)







湯田(ゆだ)温泉はすごい温泉とのこと。

どんなにすごい温泉なのかというと、

 ・昔むかし、傷ついた白狐が湯につかっていたとの伝承があり、
 ・維新の功臣たちもたびたび訪れ、
 ・防長四湯に選出され、
 ・また山陽路で随一の名湯で、
 ・県庁所在地の中心地に温泉が湧いており、
 ・豊富な湯量、一日2000トン、
 ・無味無臭、肌によく馴染むやわらかい湯が特長で、
 ・別名は「美肌の湯」、
 ・そして、中原中也の出生地である。





え〜と、訪問したのは2023年8月12日。日帰り温泉の清水湯に行こうと思っていたが、清水湯の源泉の温度は65度。とても熱い湯で有名らしく、真夏の真昼に入る気分ではなくなってしまい、訪問を断念。
(自分自身、正直それほど温泉ファンでないことが分かった)



湯田温泉と言えば、中原中也の出生地で、生家は中原病院。
父親は陸軍のエリート医官。
中原中也は小学校時代は神童と呼ばれたが、高校から成績は落ちていき、次第に不良少年となって、ついに3年生で落第となった。
世間体が悪く、故郷にいられなくなった中原中也は京都そして東京へ出て詩作の日々を過ごすも、30歳で夭折。



中原中也の代表作「一つのメルヘン」に登場する川は、実は故郷を流れている吉敷川だとされている。この川は川床が砂地のため、水が伏流することから水無川の異名があるらしい。詩の中の川もそれまで流れていなかった川の水がいつのまにか流れ出しているのだが、伏流と関係がありそうだ。


秋の()は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射しているのでありました。

陽といっても、まるで硅石(けいせき)か何かのようで、
非常な個体の粉末のようで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもいるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでいてくっきりとした
影を落としているのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……
中原中也(一つのメルヘン)








【現地訪問】


中原中也の生家には「中原中也記念館」が建っている。























温泉の湯量、一日2000トンというのが、どんなのかよく分りません。
群馬県の草津温泉は毎分3万2000リットルらしいのですが、これも想像できません







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