すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


由良の門(ゆらのと)(京都府宮津市)






由良の門を渡る舟人かぢをたえ ゆくへも知らぬ恋の道かな 曾禰好忠(百人一首)
由良川の河口の流れが速い瀬戸を漕ぎ渡る船頭が、櫂をなくして行く先も分からずに
漂っていく、そんなようにこれからどうなるのか行く末が分からない私の恋の道行きだ
(小倉山荘ホームページ)


汐汲浜公園に歌碑




歌枕としての「由良」は万葉集以来、紀の国の「由良の崎」が題材としてよく詠まれている。大和政権の歴代天皇が牟婁の湯、現在の和歌山白浜温泉への行き帰りに船で由良を通過したため、羇旅歌としてよく詠まれたもの。

一方、百人一首にも選出された曾禰好忠の歌は、丹後の由良の歌とされている。それは曾禰好忠が長く丹後掾の官職を務めたことによる。

では丹後の「由良の門」とはどんな場所なのか。
門は水の出入り口で流れが激しい場所のことで、河口のこと。
つまり由良川の河口のこと。

現在は、丹後鉄道 宮舞線の由良川橋梁が架かっている。
大正年間に完成した情緒ある単線の桁橋で、鉄道ファンの有名な撮影スポットになっている。


「由良の門」と由良川橋梁。
橋の長さは550メートルらしい。
その程度の距離なら、舟で渡っていて(かじ)がなくなったとしても、岸まで泳いでいける距離だ。
列車の通過を待ったが、来なかった。


とは言え、百人一首の歌枕の地にはやはり一種のオーラがあった。




汐汲浜公園から道を渡ったところにある「由良の戸碑」。
剥落していてよく分からなかった。




曾禰好忠の歌を受けて次の歌が作られた


由良の戸に梶を絶えしは昔にて 安らに渡るけふの楽しさ 賀茂季鷹
賀茂季鷹は江戸時代中期の国学者

















由良川を詠んだ歌もあった


由良川は霧飛びわたる曉の山の峽より霧飛びわたる 長塚 節

山もとのかすむあたりの遠じろの由良川うねる神の代のごと 加藤克巳





















【山椒大夫ゆかりの地】


丹後の由良は、山椒大夫ゆかりの地でもある。

人買いに騙された親子は引き離され、姉弟は丹後由良湊の山椒大夫に売り渡された。
姉弟は山椒大夫に酷使され、弟は1日に3荷の柴を刈らされ、姉は1日に3荷の潮汲みをさせられた。そして間があれば藻塩を焼く手伝いや、糸を紡いだりさせられた。
弟は柴刈り払う鎌を怨み、姉は潮汲む桶に泣いた ・・・




これが姉の安寿が汐汲みをさせられた場所。
現在の名称は「汐汲浜」



岩の上に石碑が建っているが、何なのだろう



汐汲浜にある汐汲浜公園に山椒大夫の文学碑がある
























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