すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


全昌寺(石川県加賀市)




なにかと開放的な神社に比べて、お寺は閉鎖的でなかなか入りづらいものがある。

入ったところで、他に拝観者がいないときなど、当方の一挙一動を観察されているような気持ちになり、落ち着かない。

住職が出てきて案内してくれる場合も恐縮してしまう。住職とマンツーマンになったら逃げ出したい気分になる。

入ってすぐに出ていくのも失礼な感じがするし、かと言って、時間をかけて見学するほど見所がいっぱいな寺も少ない。

寺を維持していくために拝観料が必要なのはよく分かるが、拝観料に釣り合わない内容の寺も多いし、一日中、史跡巡りをしていると出費もかさむ。



そんな、いろんなことを考えた末に、総合的な判断で、今回は寺の外から写真を撮るだけにした。



【全昌寺】 ・・・ 石川県加賀市大聖寺神明町1


松尾芭蕉はこの全昌寺に金沢から同行してきた北枝とともに泊まった。

山門



拝観者用の入り口
他に見学者の姿も見えず、なんとなく入りにくそうだったので、外から写真だけ撮った。
境内には芭蕉塚や曽良の句碑があったり、また本堂には芭蕉の木像があったり、本堂の隣には芭蕉が泊まった茶室が再現されたりしているらしい。



山門前の「全昌寺」碑。「芭蕉旧跡」の碑文も。





じつは芭蕉が泊まった前の日まで、弟子の曽良がこの全昌寺に二泊していた。
曽良が全昌寺で詠んだ句。

終宵秋風聞くやうらの山 曽良(奥の細道)






曽良は夜もすがら、夜中じゅう裏山の秋風を聞いていたらしいのだが、この「うらの山」は全昌寺の裏山のことだろう。



これが曽良の句の「うらの山」!
一般的な裏山であった。



芭蕉は全昌寺で一泊し、次の朝、朝食を食べてから出掛けようとすると、若い僧らが紙や硯をかかえて階段の下まで追っかけてきた。ちょうど庭の柳の葉が散ったのを見て、

庭掃いて出でばや寺に散る柳 松尾芭蕉(奥の細道)


北陸道尼御前PA(上り)に句碑


と即興の句を作って書き与えたとのこと。
有名人が来たので、なにか書いてもらおうという気持ちは現在にも十分通じるものがある。



なお、寺の外から柳の木を探してみたが、なかった、というか見えなかった。











寺の受付の人と目が合ったので、すぐに退散しました。






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