すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


日野山(福井県越前市)







越前の名峰、日野山。
その秀麗な山容から越前富士と呼ばれている。
西麓にある日野神社の神体山で、頂上には祠が祀ってあるらしい。

と、ここまではどの地方にでもある地元ナンバーワンの山と同じであるが、なんと、あの紫式部が生涯で都を離れた唯一の滞在地、武生から毎日眺めていたというエピソードがあり、しかも歌にも詠み込んでいることから、日本文学史上でそこそこ有名な山として知られている。

紫式部の武生での生活はわずか一年程度であったが、武生の町としては、よくぞ来てくれた!という感じだろう。紫式部ゆかりの地として町の文化度は上がるし観光でも売り出せる。そんな「おらが紫式部」のモードの中、造られたのが紫式部公園。
3000坪の広大な敷地の中に寝殿造の庭園があったり、金色に輝く紫式部像があったり、並大抵のスケールではなかった。しかも借景には日野山を配置し心憎いまでの演出がなされていた。




こんなかんじ


【紫式部公園】 ・・・ 福井県越前市東千福町20


紫式部公園の自由広場越しに見える日野山。



ジャーン!
金色の紫式部像。夜にライトアップされたらすごいだろう。



惜しむらくは、像の左右のレリーフの写真を撮らなかったこと。レリーフには紫式部の生涯の名場面を描かれている。右側は父の藤原為時とともに越前に赴任する途中で休憩するところ。左は藤原道長との対面の図。



紫式部像越しに見える日野山。
紫式部は武生の町から日野山を眺めていたとの逸話から、この紫式部像も日野山を向いて建てられている。



そしてこれが寝殿造庭園



建物は釣殿。
ちなみに寝殿はなく、建物の基礎だけがある。



池の奥に燦然と輝くのが紫式部像。




公園に併設して無料休憩所の「藤波亭」がある。

手打ちそばや甘味の食事メニューもあり、土産物の売店もある。



そして圧巻なのが等身大の紫式部像。



いろんな資料が展示されていたので一見の値打ちあり。




この紫式部公園には四基の歌碑があった。



暦に初雪降ると書きつけたる日、目に近き日野岳という山の雪、いと深く見やらるれば
ここにかく日野の杉むら埋む雪小塩の松に今日やまがへる 紫式部(紫式部集)










春なれど しらねのみゆき いやつもり とくべきほどの いつとなきかな 紫式部

これは日野山ではなくて、「越の白山」を詠んだ歌










身のうさは 心のうちに したひきて いま九重に 思ひみだるる 紫式部

これも日野山とは関係なし。宮中で苦労しているときの歌










日野嶽の雪を詠みたる紫女の歌ながく残らむことをこそ祈れ 吉井勇

吉井勇が紫式部の詠んだ日野山の雪の歌を絶賛したもの








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紫式部公園の案内板













さて、与謝野鉄幹と晶子夫妻は昭和8年に武生を訪れ、日野山を眺めて歌を詠んだ。


紫式部公園から北へ200メートルの場所に歌碑が設置されていた。


われも見る源氏の作者をさなくて父と眺めし越前の山 与謝野晶子





朝の富士晴れて雲無し何者か大いなる手に掃へるごとし 与謝野鉄幹










この場所から日野山を望もうとしたが、住宅で見えなかった。




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その他、芭蕉の句

あすの月雨占なハんひなが嶽 芭蕉翁月一夜十五句















しきぶ温泉という天然温泉があるそうです。





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