すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


信太の森(大阪府和泉市)


平安時代の陰陽師、阿部晴明のお母さん(葛の葉)の伝説の森。



以下、信太森葛葉稲荷神社のホームページから引用

昔、大阪阿倍野の里に安倍保名という若者がいました。家の再興を念じてこの信太の森の
稲荷へ日参していました。ある日、お参りを終えて帰ろうとすると、一匹の白狐が走り寄って
来ました。狩人に追いつめられて助けを求めてきました。保名は、草むらにキツネを隠し狩人達と
争いになりました。傷を意識を失った保名が気が付くと、一人の美しい女性に介抱されていました。
名は葛の葉といいました。
数日後、保名の家へ葛の葉が訪ねてきて二人は心を通わせ夫婦となり、男の子が生まれました。
しかし、幸せは長くは続きませんでした。
この子が五つとなった秋、子供に添い寝していた葛の葉は眠っているうち、神通力を失って
キツネの正体を現せてしまいました。目覚めた子供はそれに気づく。もうこれまでと葛の葉は口に
くわえた筆で歌を書き残して去りました。その歌は、
 
恋しくは たづねきてみよ 和泉なる信太の森の うらみくずの葉 

夫と子供に宛てたものです
母を慕って泣く子を背にした保名は妻の名を呼びながら信太の森に来てみると、以前は
見えなかった葛の葉っぱが社面一面に群がり茂っていました。そしてそれらの葛の葉が
夫と我が子の声に応えるように葉をそよかせ泣くがごとく、葉のうらを見せてざわめいていました。
その子は後、いろんな天皇に仕えられた、陰陽士”安倍晴明”です。
 




信太森葛葉稲荷神社の正面


「恋しくは・・・」の歌碑があった


<姿見の井戸>
白狐が葛の葉へ化けたときに、
鏡に変えて姿を映したと言われる。

 
現在の信太の森。住宅街の中にある。







  

  
町名は葛の葉町





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古今和歌集には和泉式部と赤染衛門の贈答歌がある
移ろはで しばし信太の森を見よ かへりもぞする葛の裏風 赤染衛門
秋風は凄く吹くけど葛の葉の恨み顔にはみえじとぞ思う 和泉式部
この歌は和泉式部が夫の橘道貞(和泉国司)と仲たがいをした時、
赤染衛門は歌を贈って慰めたという。(和泉市のホームページより)



境内に和泉式部の歌碑





さて、昔から楠の大木が有名であったらしく、根元から二つに分かれ、枝が四方に広がっていたので、「千枝」の楠と言い伝えられてきたもの。

和泉なる信太の森葛の葉千枝に分かれてものをこそ思へ   古今和歌六帖


今でも根元から分かれている













今となっては神社の周りに森が残るのみですが、
往古はどんな感じだったのでしょうか







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