すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


鼓ヶ滝(つづみがたき)(兵庫県川西市)






音に聞く鼓が滝をうちみれば 川辺に咲きし白百合の花 伝西行作


川西市多田桜木1丁目の下滝公園に歌碑




「鼓ヶ滝」は古典落語の演目の一つ。
登場人物は有名な歌僧、西行法師。場所は摂津国。


内容を簡記すると、


西行が摂津国の景勝地である鼓ヶ滝にやってきて、歌を詠んだ

伝え聞く 鼓ヶ滝に 来て見れば 沢辺に咲きし たんぽぽの花

西行は日が暮れるまで鼓ヶ滝を眺めていたため、近くの木こりの家に泊めてもらうことになった。

そこで木こりから、どんな歌を詠んだのか聞かれて、詠んだ歌を披露した。

すると木こりは、滝の音が鼓が鳴るように聞こえるのだから、

「伝え聞く」ではなく「音に聞く」の方が良いと指摘された。

しかも木こりの妻からは、鼓は打つものなので、

「来て見れば」ではなく「うちみれば」に方が良いと指摘され、

挙げ句、木こりの孫娘から、鼓は皮を張るものなので、

「沢辺に」ではなく「川辺に」が良い、

しかも乾いた土壌に生えている「たんぽぽ」ではなく、湿地に咲く「白百合」の方がベター、とダメ出しを受ける。

結局、西行が詠んだ歌は殆ど添削されてしまった。

音に聞く 鼓が滝を うちみれば 川辺に咲きし 白百合の花

西行もたしかにこっちの方が良いと、木こり一家に感謝したところで、西行は夢から覚めた。

まだ昼すぎで、鼓ヶ滝のほとりで寝ていたらしい。

実は木こり一家は歌の神様である住吉明神、人丸明神、玉津島明神だったとか。

落語の最後は、この滝は鼓なので、バチ(撥)は当たらない、で締めくくられる。















【現地訪問】

今回訪問したのは、川西市多田の鼓ヶ滝。猪名川が盆地を抜ける峡谷部分に昔は10メートルを超す滝があり、景勝地になっていた。その滝が落ちる音が鼓を打つように聞こえたとのこと。

猪名川は一級河川で、水量も相当あるので、一本の滝ではなく、ナイアガラのような豪壮な眺めだったのだろう。


現在の鼓ヶ滝。
昔、水運を通すために岩を削ったようだ。
右手のマンションからは、素晴らしい景色を眼下に見ることができそう。
確かに左右の山がV字になっている。盆地を流れてきた猪名川はこの狭窄部分を抜けて大阪湾に注ぐ。。




能勢電鉄の駅名も鼓滝駅





摂津名所図会「多田 鼓ヶ瀧」

早稲田大学図書館







地図のマークは西行の歌碑の場所
鼓ヶ滝は、歌碑の南方の猪名川の峡谷部分







鼓ヶ滝は摂津にもう一ヶ所、有馬にもあり、同じような伝承があります。







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