すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


夢のわだ(奈良県吉野町)

吉野 奥千本、青根ヶ峰から流れ出た水は喜佐谷の「象(きさ)の小川」を経て宮滝にて吉野川に注ぐ。
ここは両岸から岩が切立っており、川は深い淵になっている。
この合流地点はのことを万葉時代には「夢のわだ」といい、その険しい岩肌が織りなす美しさに万葉歌人たちは憧れた。


 我が行きは久にはあらじ夢のわだ瀬にはならずて淵にしありこそ 大伴旅人(万葉集)
私の大宰府長官の赴任期間はそう長くないでしょう。「夢のわだ」は
淵のままであってほしい、地形が変わって瀬にならないでほしい。


吉野川に張りだした宮滝展望台から「夢のわだ」を望む。
左から「象の小川」(喜佐川)が流れ込んでいる。



左岸から流れ込んでいて、白い線のように見える。
ここが「夢のわだ」。



大伴旅人は大宰府赴任が長くなれば、淵がなくなって浅瀬になってしまうと心配したようだが、1300年を経た今もちゃんと淵のままであった。

この日、前日から朝まで大雨が降ったため、川が増水して岸辺まで降りれず、喜佐川が吉野川に注ぐ場面のベストショットを撮ることは適わなかった。

柿本人麻呂が絶唱した「見れども飽きず」ってこのことだな、としみじみ思う風景であった。
 





夢のわだ(こと)にしありけりうつつにも見て来るものを思ひし思へば 万葉集
夢のわだを見たいとわだかまりがあったが、言葉でなく
現実に見てきました。ずっと見たいと思っていたのだ。


この歌の通り!





 

 







雨後でしたが、やっぱり水量が多いと迫力がありました。






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