すさまじきもの ~歌枕探訪~


浅沢小野(大阪市住吉区)




やっと浅沢小野へ訪問した。

家から近いのに何故だか訪問する機会がなかった。
住吉関連のゆかりの地はほとんど制覇したのに、浅沢小野だけがパズルの欠けたピースのように残っていた。

と言って最後まで残っていたのは、この歌枕の地にそれほど魅力がないのも大きな理由であったことはたしか。
「まあ、いつか行ったらええやろ」と思っていた。




そんないかにも優先順位の低い「浅沢小野」へ行ってきた。


先ず住吉大社に行く。
というのは、浅沢小野は現在では「浅沢社」という住吉大社の末社になっているため。



住吉大社の船型の万葉歌碑をチラ見して、


住吉大社の南東の門から出たところにある。

これが浅沢小野の地。現在の浅沢神社



正面から撮影



カキツバタの湿地帯の中に神社がある。



裏の方。一面がカキツバタ。



ここのキーワードはカキツバタ。
それは次の万葉歌の影響による。


住吉浅沢小野かきつはた衣に摺り付け着む日知らずも 万葉集


千躰交差点の南東のマンション前に歌碑


万葉時代、この辺りは湿地帯になっていて、カキツバタが見事に咲いていたらしい。
この歌が影響して平安時代に藤原定家が次の歌を詠んでいる。
※カキツバタは紫の花


いかにして浅沢沼のかきつばた紫ふかくにほひ染めけん 藤原定家


住吉区南住吉2-10付近の細江川沿いに歌碑











浅沢神社の案内板によると、

・昔、この辺りに清水が湧き、浅沢の池があった。
・そこに咲くカキツバタが有名になり、歌に詠まれた。
・昭和になり、池が涸れた。カキツバタに代えて花菖蒲が移植された。
・平成になり、近くの細江川の改修工事に合わせ、水脈を確保し、新たにカキツバタを植えた。
(財団法人 住吉名勝保存会)

とあった。



ふ~ん、そうなんや
実際のところ、カキツバタもアヤメも、それから花菖蒲も同じに見える。
「いずれアヤメかカキツバタ」という言葉があるように、見分けが難しい花である。
この機会にネットでちょっとまとめてみた。

漢字 分類 育成場所 高さ 開花時期
しょうぶ 菖蒲 サトイモ科 湿地 縦長で別物 5月上中旬
はなしょうぶ 花菖蒲 アヤメ科アヤメ属 乾燥地も湿地も可 高い 大輪 5月下旬以降
あやめ 菖蒲 アヤメ科アヤメ属 乾燥地(畑地など) 低い 小輪 5月上中旬
かきつばた 杜若 アヤメ科アヤメ属 湿地 中間 中輪 5月中下旬


いろいろ調べてみて、だいたいこんな感じにまとまった。
花の写真がないので何が何だか分からないモノになったが、

言えることは、カキツバタを復活させるには水が必要で、そのために近くを流れる細井川から水を引いてきたらしい。


現在、細井川に自然の水源がなく、都市整備事業の高度処理水を流水させているので、その一部をこの浅沢神社の池に導水しているのだろう。



なお、細江川の上流では湿地帯が再現されている。






住吉区千躰1丁目1−5付近

細井川(細江)のページもご覧ください。











平安時代には、「清らかな水の流れ」から、セリ(芹)が連想されたようで、セリ関係の歌も残っている。


思ひかね浅沢小野つみし袖のくちゆくほどを見せばや 式子内親王



いざやここ若菜つみてん根生ふる浅沢小野は里遠くとも 藤原俊成


住吉区南住吉2-20付近の細江川沿いに歌碑






住吉大社と浅沢神社の位置関係(左が北)






予想以上に満足感のある万葉故地でした。






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